想像力と数百円。・・っていう一昔前の新潮文庫のキャッチコピー、大好きでした。
『翳りゆく時間(とき)』(浅田次郎選)
浅田次郎が選者となったアンソロジー。帯のコピーを借りると
「秘めた想いが高まって溢れ、やがてほの暗いメランコリーに昇華してゆく」物語を7編収録しています。
江國香織、北方謙三、吉田修一、阿刀田高、浅田次郎、山田詠美、三島由紀夫といういずれ劣らぬ文豪ばかり。
どれも短いものの、実に味わい深い作品が並んでいるのですが、ひとつ共通点があることに気づきました。
それは
「感情を表現するのに直接描写していない」ということです。
「喪失感」と言うかわりに『りんご追分』が公園に流れるシーン。
「忘れかけていた過去への決別」と言うかわりに止めていた煙草をふかし始めるシーン。
「迷いを隠して旧友と再会するも複雑な感情」と言うかわりに、グラスにできた泡の線。いずれも読む側の想像をグッと掻き立て、思わず読後唸らされてしまう。そんな贅沢な時間を過ごさせてもらいました。。。
浅田次郎があとがきで興味深いことを書いていました。
曰く「(同世代だけでなく)若者たちと会話をすると、
動物的な五感の衰弱を感ずる」。
この短編集も、小説でしか実感できない作品を取り上げ、
心の妙薬として編んだと言うのです。
ここ数年、ビジネス書が読書の大半を占めていたのですが、最近数週間は久しぶりに小説やエッセイを意識的にたくさん読むようにしています。
それが何だか心地いい理由が自分でははっきり分からなかったのですが、どうやら
五感を癒してくれる効用をいつのまにか求めていたのかもしれません。
ビジネスの世界も、やはり人間と人間のぶつかり合いである以上は、「心」のアンテナが鋭敏に活躍していることが必要不可欠だと思っています。
ロジカル・シンキングも必要ですが、
こういう心を研ぎ澄ませるための読書もとっても必要なのではないかと、しみじみ感じてしまった秋の夕暮れでした。
あの著名な作家7名の珠玉の短編を420円で買えるのはありがたい話です。ハイ。まさに想像力と数百円とはこのことで。
※人気ブログランキングです。少しでも学びがありましたら、ぜひココをクリックしてやっていただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします!『翳りゆく時間(とき)』(浅田次郎選)
こういう記事を書くと「何か悩みでもあるのか?」とかご心配くださる方もいらっしゃるのですが、全然そういうことじゃないですからね~(汗;)
浅田次郎も相変わらずコブシが効いた作品が続きますね。映画も面白そうです。
【参考記事
:『椿山課長の七日間』(浅田次郎著)@想いをめぐらせるお盆。】
スポンサーサイト
この記事をリンクする?:
プチファイさん、こんばんは!
私はあいも変わらずビジネス書ばかりですが、それでも例の(?)「右脳ラーニング」以降、
若干傾向に変化があります。
てか、そうしないと、そっち方の課題(mixiのコミュがあるんです)がこなせないという(汗)。
ただ、違ったものを読まないと、発想が狭くなる、という恐れはありますし、頭に栄養を
与える意味でも、小説なんかは贅沢だと思います(笑)。
ところで、前回の記事の赤ちゃんの番組、ヨメが録画していて昨日観ました(笑)。
メインで登場していた赤ちゃんの出産した病院って、ムスメと同じところでした(笑)。
無痛分娩なんですよね、あそこ。