自らの生き様を「愚直」と言い切れる凄みに震えます。
『「愚直」論』(樋口泰行著)
45歳にして日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)社長に就任した樋口泰行さんの半生記です。
松下電器産業で技術職としての勤務を経て、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。その後、ボストン・コンサルティング・サービスに転職後、アップルコンピュータ、コンパックコンピュータ、日本HPと舞台を変えてキャリアを積んでいく奮闘が描かれています。
※発行時期の関係で、日本HPからダイエー社長に就任した話は触れられていません。念のため。とかく華麗なイメージが先行しがちですが、本書で述べられているのは
そんなイメージとはかけ離れた泥臭い部分です。技術職の中でも誰もが嫌がる現場部門で実績を出そうと奔走したり、ハーバードで落第候補に挙げられながら巻き返す姿、コンパックでは立場の弱い日本支社と顧客の要望の間で奮闘し、米国本社に自らの進退を懸けて交渉に臨む・・・。
私は樋口さんという人を良く存じているわけではもちろんありませんが、
本書で語られている奮闘ぶりは、きっと美談や誇張ではないのだろうなと直感的に感じました。ハーバードを卒業してBCGという道を歩んでいらっしゃいますが、コンサルにありがちな薄っぺらさはどこにもありません。本書でもその
行間から滲み出る迫力に圧倒されました。
これこそ自らを「愚直」と言い切れる凄みなのでしょう。感服です。
実は「愚直」というワードはこのブログのサブタイトルにも使っています。目指す高みと日々の雑事とのギャップに気が遠くなりそうなときに、一歩一歩頑張るしかないんだと
自分に言い聞かせる意味で名づけたのですが、本書はそんな心の支えになってくれそうな一冊でした。
(表紙の樋口さんのギョロリとした視線に思わず背筋が伸びます・・・!)
以下、印象に残ったアツイ金言。
●では、どうすれば「おにぎり」のような(求心力ある)組織がつくれるのか。私はやはり、会社の根底に流れる精神的な結びつきを強めるしかないと思う。・・・
社員全員が共感できる「思い」、社会から認められる企業でありたいという「思い」が、組織の風土として根付いているかどうかが重要となる。
●「キャリアアップ」や「人脈づくり」といった抽象的な願望ではなく、米国流のマネジメントを学ぶことで自分の「スコープ」を広げたいと具体的に思っていたからこそ、厳しい授業を乗り切れたのだと思う。・・・
なぜ自分がここで踏ん張らなければならないか。その理由を明確に持っているかどうかがキャリアの分かれ道になる。
●(コンパック社のコンシューマPC事業にて)私は慎重に戦略を立てた。すべてを同時に改善するのが難しい以上、
できる範囲内でもっともインパクトの大きい改革から着手しなければならない。
そこで一定の実績を叩き出し、発言力を高めたうえで、順番に改善していくのだ。
●価値観や立場の異なる人たちを動かすのは、ロジックやファクトだけでは十分ではない。
どれだけ熱い言葉で語れるか、それがもっとも大事となる。
信念に裏打ちされた言葉、日々の努力が凝縮したような言葉を誠意を持って相手に伝え続ける。それが価値観や立場の壁を越えて、時には言語の壁を越えて人を動かす。
●自分に与えられた環境の中で一生懸命に努力し、実績を出すことによってのみ自由度が高まるという考えは、組織全体にも当てはまる。
ビジネスの集団である以上、結果を出さなければ発言力が弱いのは当然である。いまできる範囲で頑張るしかないのだ。●能力やスキルの向上は、
プレッシャーの中で真剣に考え抜いた場数によって決まる。
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私たち日本HPの役目は、仕事環境の面から日本を生産的にすることである」というくだり。
金儲けとか名誉欲とか、そんなものを超越した高い意識。かくありたいものです。
ダイエーの再生支援に絡み、丸紅との関係もあり、ダイエー社長は2006年10月に退任予定とのことですが、この「愚直」さで、さらにキャリアを積んでいかれることでしょう。
ダイエー再生といえば、現会長の林文子さんも有名ですね。高卒OLから車のトップセールスマンとして頭角をあらわすまでの奮闘ぶりも非常に感じるものがあります。
『一生懸命って素敵なこと』(林文子著)
『失礼ながら、その売り方ではモノは売れません』(林文子著)
どちらも有名でよく売れた本ですが、いま読み返してみてもこういう熱いメッセージは普遍的に価値を持ち続けるものだと思います。
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プチファイさん、おはようございます。
スクランブル体制でこんな時間にカキコ(汗)。
私が読んでいる中では、アイデア系は代理店、経営系はコンサルさんの方の本が多いですね、やはり。
どちらの業界の方についても、「発想法」「思考法」については興味あるんですが。
(それもあって、「右脳」とか言ってます(笑))
>価値観や立場の異なる人たちを動かすのは、ロジックやファクトだけでは十分ではない。どれだけ熱い言葉で語れるか、それがもっとも大事となる。
そういうアプローチをなさるのなら、私の友人の平野日出木の本(ウチの右サイドバーに貼ってます)も参考になるのかも。