週刊東洋経済は、連載ものについていえば興味深い内容が多く、目を通すようにしています。いま店頭に並んでいる6月7日号で、非常にうなずかされる記事があったので紹介したいと思います。
「超」整理術で有名な野口悠紀雄さんが『説話・ファイナンス理論』という連載を持たれています。社会・経済事象についてファイナンスの観点から論を持つという内容で、
当たりの回が多く、楽しみにしている連載の一つです。
今回のテーマは、今更のような気もしますが「
エンロン事件の本質はなんだったのか?」。
エンロン事件は企業倫理/コンプライアンスの文脈で扱われることの多い事例ですが、この記事では収益操作に用いられた金融工学について扱われていました。
従来の論点としては
「金融工学の悪用(⇒だからデリバティブとかは信用できない)」「時価総額経営批判(⇒だからアメリカ型の株価重視経営はダメだ)」という切り口が多かったなかで、
著者は、
エンロン事件の本質は「ファイナンス理論や金融工学に対する世間一般の過大な期待」だったと断じます。
※文中でも触れられていましたが、ライブドアだって、世間/市場の過大な/誤った期待によって株価が上昇した点では本質は同じといえましょう。野口さんのコメントは、非常に説得力があり、かつ爽快でした。即ち「
ファイナンス理論の内容は高度ではあるものの、その結論はきわめて常識的なもの。だから、冷静に考えてありえないことは、ファイナンス理論の立場からも否定される」。
カネは会社経営のすべてのベースであり、ファイナンスに関する難しい理論を読み解けることはきわめて大きな価値がある。(それは大半の人にはできないけれども自分にはできる)
・・・・・・投資銀行のアソシエイト君や財務経理ひと筋●年というタイプの人で、ときどきこういう勘違いさんに出会うことがあります。
最近もいたなあ、残念ながら。ファイナンスはたしかに重要ではあるけれども、
決して魔法の杖ではないという、ごくごく当たり前のことを思い出させてくれました。
詐欺や犯罪行為によらず、市場の平均より高い収益率を継続的にあげられる例として野口さんがあげているのは以下の2パターン。
(1)他社が
追随できない技術を持ち、
適切なビジネスモデルに支えられている場合。例:グーグル。
(2)
独占力を持つ場合。例:マイクロソフト、石油会社、昔の電話会社。
どちらもないのに収益が増えているとすれば「どこかおかしい」。あるいは高収益は一時的なものに過ぎないはずと述べています。まあ、そりゃそうですよね。
ファイナンスに限らないかもしれませんが、
小難しい理論の枝葉を知るよりも大切なのは「健全な常識」眼を持つことなのかもしれません。本稿の一節を借りるならば
「グーグルとエンロンの違いを理解できるかどうか」が経営者にとって最も重要なスキルのような気がしました。
・・・これからMBAで学ぶ者としては、ちょっと背筋が伸びるような思いのする論文でしたね。
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グーグル or エンロン?@野口悠紀雄『説話・ファイナンス理論』
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